大城夏紀 滞在レポートVOL.4

Natsuki Oshiro Residency Report Vol.4

【2018/12/18 レポートVOL.4】

パリの滞在を通して素敵だなと思うことのひとつ。
それは、光の心地よさです。

夜のパリの街は、オレンジ色の街灯がほどよく転々と置かれてあり、周りが見えないほどではないけれど、街の中に影があります。
オレンジの光で淡くなった視界に、石畳みと石壁に不思議な音の反響が重なって、まるで夢の中を歩いているような、たまに現実の道ではないような浮遊感が漂っています。

昼の街中は、太陽の光がまんべんなく広がり隅々までよく照らされているので、夜の世界とのコントラストを感じます。
(東京よりも太陽の強さが弱い気がします。東京の太陽が日光なら、パリの太陽は外光、というイメージ!)
一方で、昼間は屋内に影が生じます。
縦長に大きく作られた窓のおかげで、部屋の明かりよりも外光の方が強いので、室内には自然に影ができるわけです。
そして窓からの外光で作業をしていると、ふと、日常の隙間のような、ぼーっと考えてしまうような不思議な時間を自然に過ごしている自分に気が付きます。

部屋の中の暗さと、外の世界の明るさにもコントラストを感じて、それがなんだか心地よく、とても「絵」を描きたくなる気分にもなります。

(シテ・インターナショナル・デザールの廊下は、ライトを自分でつけると、自動的に消える仕組みです。昼は遠くの窓にある外光だけで、充分歩くことができます。常にライトがついている建物に慣れた私としては、初めは戸惑いつつも、慣れてきた今では心地よく感じています。)

日本での、蛍光灯でしっかりと照らされた私のアトリエでは、フラットに一日の時間が流れていました。こちらのアトリエでは、太陽の変化を感じながら作業をせざるを得ないわけですが、滞在中、「作品とじっくり向き合うこと」「よく考えること」という時間が、とても増えている気がします。

12月の初旬に、ノルマンディーの女性彫刻家のお家に一泊だけお世話になりました。トラディショナルスタイルのお家で、部屋の明かりではなく差し込む外光の中でテーブルを囲んだ昼食は、とても不思議で魅力的な体験でした。お昼を食べながら、ふと彼女が指を耳のそばに立てて、「(窓を小さくたたく)風の音が。風の音がする。」とさりげなく口にした一言が印象的です。

ホワイトキューブ的なフラットに照らす光も、手元がよく見えるし、色も見やすいので、もちろん私は大好きです。
ただ、明暗のある場所がどこかにある、という世界で暮らすのはなかなかに心地よく、あぁ、こういう場所で感性を養いつつ、パリやフランスの芸術は生まれたのだと、しみじみ実感しております。
(そしてそれは、日常の隙間のような、フランスのずっと続く並木道に囲まれた時の不思議な心地よさ、哀しさや懐かしさとは違う独特のノスタルジーに似ている気もします。)

谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」に、昔の日本の家屋には影があった、屏風はろうそくの灯りで見るものだったし、味噌汁の中にも影があったのだ、といったような記述があったのを思い出します。フランスと日本の影とではおそらくだいぶ質は異なりますが、こんなところにもささやかな共通点を見つけたのでした。

「シェル美術賞 レジデンス支援プログラム」滞在レポートvol.4
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