シェル美術賞2018 学生受賞者対談

学生受賞者

左:深川未貴(ふかがわ みき)1996年生、嵯峨美術短期大学専攻科洋画コース2年
中:近藤太郎(こんどう たろう)1995年生、武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程美術専攻1年
右:山ノ内陽介(やまのうち ようすけ)1996年生、名古屋造形大学造形学部造形学科洋画コース4年

美術公募展「シェル美術賞」は、昭和シェル石油株式会社が主催する40歳以下の若手作家のための美術賞。赤瀬川原平、高松次郎、菅木志雄など著名な現代芸術家を輩出しており、2018年で62年目を迎えた。

「既存の権威にとらわれず、新人を発掘して自由に賞を与えたい」という想いは、創設当初から今も変わらない。2017年からは学生支援強化の一環で学生特別賞を設置。2018年の学生特別賞は嵯峨美術短大専攻科2年の深川未貴さんと名古屋造形大4年の山ノ内陽介さんが受賞した。さらに、グランプリを武蔵野美術大学大学院1年の近藤太郎さんが受賞と、多くの若き才能が見出されることとなった。

前回のインタビューでは、グランプリの近藤太郎さんにお話を伺った。今回は2018年の学生特別賞のお二人に作品を紹介いただくとともに、3名の学生受賞者にシェル美術賞の魅力や未来に向けた意気込みを語っていただいた。

フィードバックの手厚さ、知名度―さまざまな魅力を感じて応募した

-皆さん、受賞おめでとうございます。シェル美術賞へは、なぜ挑戦しようと思ったのでしょうか。応募のきっかけを教えてください。

近藤太郎さん(以下、近藤):僕は最近までコンペ自体の存在をあまり知らず、去年ぐらいから先輩や友達が応募している様子を見て影響され、少し応募するようになりました。シェル美術賞は初挑戦で、2018年の応募はこれ一本です。

山ノ内陽介さん(以下、山ノ内):僕の周りにはコンペに挑戦している人があまりいないんですが、僕自身は昨年から頻繁に応募しています。本格的に絵を描きはじめたのが大学に入ってからなので、どうキャリアを積めば良いのかよく分からず、コンペに応募してみるようになったんです。シェル美術賞は昨年に続き2度目の挑戦でした。昨年選外になったので今年は迷いましたが、応募してよかったです。歴史ある有名な公募展なのでいつかは入選したいと思っていましたし、昨年選外になったときも何次審査まで進んだかを教えてくださり、フィードバックの手厚さを魅力に感じていました。

深川未貴さん(以下、深川):私は親へ進学を説得する材料にしたいと思って応募しました。短大に4年在籍しており、絵を描き続けたくて進学を希望したのですが、親に反対されて。両親は美術と縁遠い生活を送っていますが、昭和シェル石油という企業の名前はよく知っているので、進学を認めてもらうにはこの賞を獲ることしか考えられませんでした。あとは、過去の図録に好みの作品が多くて以前から憧れていたことや、大学の先生など周りの後押しもあって、応募しました。

思ってもみなかったものを描き出した、受賞2作品

-学生特別賞のお二人に、受賞作品のことを伺います。深川さんの作品はさまざまなパーツが躍動的に構成された絵ですが、どのように着想し、形にしていったのでしょうか?

深川:私の受賞作品は2016年に制作し、今年加筆したものです。私は、真っ白いキャンバスに絵具を垂らしたり印刷物を転写したりして、画面の中に、『きっかけ』となる部分をつくり、そのきっかけから線や形、色などをみていくことで、想定外のものが描き出せるようにしています。本作はこの方法論で描いた初期の作品で、納得がいかないものの気に入っている部分も多く『成功しそうでしなかった』と感じていて。今、改めて見直したら『成功』にたどり着けるのではないかと思い、加筆しました。

「untitled」油彩・キャンバス 162×162cm

「untitled」油彩・キャンバス、162×162cm

深川未貴

-山ノ内さんの作品は、吸い込まれるような静寂を感じます。じっくりと描きこんだのでしょうか?

山ノ内:いえ、この作品は3時間ほどで描きあげました。僕の制作スタイルでは比較的短時間で、下描きなどの計画を立てずに自分の感情を映して描くことが多いです。絵画って、キャンバスへの配色、形や線の配置など、ほぼ無限と言っていいほど何通りもの描き方があると思います。その中で自分が一番良いと感じて描いたものも、時間が経つと本当にそれで良いのか自信がなくなってくるので、考えるよりも手を動かすんです。そうすることで、頭では思いつかなかったものが描き出される可能性が楽しいし、このスタイルで制作することが練習になって、描き方のレパートリーが増えるのではと思っています。

「独り」油彩・キャンバス 130×162cm

「独り」油彩・キャンバス、130×162cm

深川未貴

※近藤さんの作品は、下記ページでご紹介しています。
シェル美術賞2018 グランプリ インタビュー
https://www.idss.co.jp/enjoy/culture_art/art/2018/winner_interview01.html

次の時代は自分たちから新しいものの見方、イメージの捉え方を人に提供していきたい

-今回の受賞で、周囲の方の反応などはいかがでしたか?

山ノ内:今年も選外かなと思っていたので、受賞の知らせにはかなり驚きました。受賞という目に見える成果が出たことで、親や周囲もより応援してくれるようになったと感じています。

近藤:僕は友達から「仲間内だけで評価しあっていたものが、客観的に認められたようで嬉しい」と言われました。普段、学内で描いていると作品の価値がどこにあるか見えなくなりがちですが、外部の方から評価されると、価値が明確になって安心できます。僕の受賞作のテーマは『自分を描く』『自分を見る』なので気味悪く思われそうですが、作品としてきちんと成立していたようでよかったです(笑)。

深川:『目に見える成果』『認められる』という点で言うと、私は受賞のおかげで親に進学を認めてもらい、制作を続けられることになりました!

学生受賞者

-今後の活動の展望や、将来の目標をお聞かせください。

深川:今回は入選ではなく学生特別賞だということについて、絵に学生っぽい甘さがあったからなのではと感じました。あと2年は学校で制作ができるので、そういった点を突き詰めて行きたいです。また、卒業後もずっと制作し、発表し続けていけるよう、体力も精神力もつけて、進むべき道を選んでいきたいです!

山ノ内:自信が持てる手法を確立したいです。大学院に進学しようと思っているので、そこで自分の制作スタイルを見つめ直したり、様々な作家の絵を学び、掴んでいきたいですね。ただ、そのことばかりに固執はせず、柔軟に描きつづけられたらと思っています。

近藤:受賞・入賞作品の図録を見ていて、ふと平成は今年で最後だと気づいたんです。これから新しい時代が始まります。今回、僕たちは審査員の方々から賞をいただきましたが、次の時代は僕たちから新しいものの見方、イメージの捉え方を人に提供していきたいと思っています。

取材日:2018/12/14 / 文:猪瀬香織(JDN) / 撮影:小林由喜伸 / 初出:コンテスト情報サイト「登竜門」

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